【内情暴露】中学受験はすべき?私立と公立の違いは?家庭教師が解説します

長年教育業界に携わっていて、中学受験をする小学生を指導したり、公立・私立に通う中高生を指導していると、いろいろと思うところがあります。

そこで、この記事では、私立中学受験のメリット・デメリットについて解説します。

この記事を書いたひと

プロフィール

  • 現役プロ家庭教師&元進学塾講師
  • 大手教育系出版社の英語教材編集者
  • 中学受験から大学受験まで幅広く指導
  • 教育業界にも友人が多数いるため生の情報には事欠きません

この記事に書かれている意見・感想は私見であり、所属する組織とは関係ありません。

目次

私立中学・高校の特徴

家庭教師をしていて、私立の中高一貫校に通う生徒を指導することが多いんですが、生徒と話していて感じることは「恵まれてるなー」ということです。

もちろん必要以上に恵まれている側面もある一方、それは公教育でも当然やるべきだよねということが公教育では実施されていなく、逆説的に私立が恵まれている、という場合もあります。

私立のメリット①:授業の濃さ

私立校の魅力的は授業の濃さ。私立の場合は文科省の検定教科書を使う必要がないので、公立校よりもレベルの高い授業をしています。

動詞の過去形の回を例にとって、学校で使っている教科書をみてみましょう。

まず、公立の場合。過去形を学ぶページは次のような構成になっています。

■教科書(公立校使用)

COLUMBUS 21 過去形のページ
出典:COLUMBUS 21

ちなみに、これは「過去形の復習」のページで、中2の1学期の内容です。

授業は、教科書を教師がさらっと読んで、本文の内容を軽く説明して、みんなで音読したり、生徒が隣動詞でペアを組んで会話の練習をしたりして終わりです。文法学習を重視するなという文科省のお達しもあるので、文法については「動詞が不規則に変化することもあるよ」ぐらいの軽い解説で終わることが多く、不規則動詞の変化表を叩き込まれるようなことはないことがほとんどです。

一方で、私立の場合、過去形のページは次のような構成になっています。

■教科書(私立校仕様)

教科書ページ(動詞の過去形)
引用:NEW TRESURE

これは中1の冬ぐらいの授業内容。

私立の場合は、アクティビティだけで終わるのではなく、単語や文法の基礎をたたき込み、英作文やリスニングができるようになるレベルまでもっていきます。そのため、教科書に付属したワーク類も充実しています。

■付属のワークブック

引用:NEW TRESURE WORKBOOK

■付属の文法問題集

引用:NEW TRESURE 文法問題集

どちらが真の力がつくかは明らかですよね!?

文法は塾で習えばいいという意見もあるかもしれないけど、教科書と連動して単語や文法もしっかり勉強できるのが、効率的で魅力的だね。

私立のメリット②:授業の進度

多くの保護者が認識している私立のメリットといえば、やはり授業の進度かと思います。

私立は一般的には、中1の簡単な学習内容が前倒しになり、高2が終わるころには全過程が終了し、高3では大学入試の問題演習が中心になってきます。

大学受験を考えている場合、簡単な内容は早送りしてもらって、最終的にに余裕をもって大学受験にのぞめるのは相当な魅力。

というよりも、私立はそういう感じでやっているので、この流れに乗れないことが受験においてはかなりのデメリットになってしまいます。

私立の授業進度
引用:徳島文理中学校・高等学校

本来6年間(中1~高3)でやるべきことを5年間(中1~高2)で詰め込むって大変じゃないの?って思うこともあるかもしれませんが、生徒の様子を見ている限り、それ自体を大きな負担とは感じていないようです。

中学受験をして入学する生徒たちなので、それなりに勉強することは当然だと思っているんだと思います。

私立のメリット③:ICT活用

コロナ禍を通じて、私立と公立の差が大きく出たのがICT活用でした。

わたしの知っている限りでは、緊急事態宣言によって休校になったとき、公立の生徒の学校では急ごしらえしたプリントが配られ、授業で使っているワークが宿題になるだけで、授業っぽい授業をしているところはありませんでした。また、休校期間がおわったあともその単元のフォローはなく、カリキュラムがぐちゃぐちゃになったせいで、そのあとの授業もなおざりな印象でした。

一方で、私立はいうと、わたしが受け持っている生徒たちの場合は、ふだんから学校からの連絡用にタブレットを持たされていたり、授業でGoogle Workspace for Educationを使っていたりしていたので、急な休校になっても特に滞ることなく家で学校の授業が受けられている様子でした。

また、コロナ禍のような緊急事態は別においておくにしても、英語スピーキング学習システムやオンライン英会話を導入している私立の学校は多くあり、その活動もしっかり援助・評価してもらえるようになっています。

とにかくひと昔前とは大きく違うのが、ICT教育。授業を動画で見る、レポートをメールで送るとかそういう次元の話ではなく、最近の最先端の教育は本当にすごいです。デジタル活用の充実度がそのまま学習の充実度、さらには学力にまで影響してくるので、ここは必ずチェックしておきたいポイントです。

文科省(=公立)もGIGAスクール構想をがんばってるけど、まあ圧倒的に私立のほうが先をいってるよね・・・。

私立のメリット④:教育システム

ここでいう「教育システム」とは要するに、だれに教育の決定権があるのかということですが、公立の場合、すべては文科省の指示になってきます。文科省がどんなにおかしなことを言っていても、教育委員会や学校は文科省に従わなければいけません。また、文科省は1つの学校だけではなく、国全体を動かさないといけないため、基本的にいろいろなものの決定や実施が非常に遅いです。

教育課程の基準となる指導要領が大きく改訂されるのも10年に1回だけだしね。

さらに、公立の場合、各学校の長は校長先生ですが、校長先生が異動になることで学校全体の教育方針や雰囲気が変わることはざらにあります。

一方、私立は、それぞれの学校の理念に基づいて教育がなされるので急な方針転換ということはほぼありませんし、本当に子どもに合った環境を探すことが可能です。さらに、顧客(=保護者・生徒)の満足度を意識して柔軟に環境整備がなされるのも私立の大きな強みということができるでしょう。

私立のメリット⑤:生徒・保護者の水準

私立中学は、小学生のときに人並みもしくはそれ以上の努力をした生徒が集まってきます。保護者も教育感度が高い方が多く、全体の水準が高いというのは、やはり私立のメリットなのかと思います。

努力を結果に結びつけられる素養がある子どもたちが集まり、切磋琢磨しあいながら過ごせる環境は、欲しくてもなかなか簡単に手に入れるわけではありません。これほど貴重なものではないのではないでしょうか。

余談ですが、少し前に『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』という本が流行りましたが、あのビリギャルも、愛知県の私立中高一貫校の中でビリだったというだけの話であって、世間全体から見たときの本当の落ちこぼれではありません。同じ学校の生徒がすごく優秀だった、というのがオチなんですよね。

私立のデメリット①:社会の実態がわからなくなる

私立中学受験をする家庭は、やはり世間的にみると底辺といわれる層とは違います。そして、受験を経験して入学してくる生徒たちも、やはり世間的には恵まれた子どもたちです。

でも世の中ってそれだけでは成り立っていないんですよね。少し前に東京大学の上野千鶴子名誉教授が述べた祝辞が反響を呼びましたが、まさにそのとおりで、子どもたちが当たり前だと感じていることが実は世間では当たり前ではない、世の中にはもっとひどい状況が平気である、ということを知らずに大人になってしまうことは果たして正解なんだろうか・・・と、個人的には少しモヤモヤするところもあります。

私立のデメリット②:将来的な適応障害

先に述べた「社会の実態がわからなくなる」とも関連する事項ですが、中高一貫校に入学した場合、同じ価値観の中で6年間を過ごすことになります。そうなると、大学に入ったり会社に入ったりして人間関係が大きく変わったときに、それに適応しきれず精神的に病んでしまうということは、実際にあります。

また、精神疾患まではいかなくても、「男子校だったから女性との接し方がわからない」というようなことはネタとしてもよく聞きますし、学外でも様々な人と接する経験を積んでおくことが将来的に大切になってきます。

私立のデメリット③:劣等感・燃え尽き症候群・中だるみ

これは私立だからというわけではありませんが、がんばって勉強してやっと入学できたのにまわりが自分よりも優秀で劣等感を抱いてしまうという話や、小さいうちから中学合格を目標にがんばってきたから合格と同時に燃え尽き症候群になってしまうという話は、実際によく聞きます。

また、公立であれば中学3年間を終える頃に受験があって、また高校で新しい出会いがあってと、ライフスタイルにメリハリが出てきますが、私立だと大きな環境の変化がないため、中だるみをしてしまうとなかなか抜け出せないという話もちらほら聞きます。

合格を目標にするんじゃなくて、その先どうなりたいのかに意識を向けさせることが大切だよね。

公立中学・高校の特徴

塾講師・家庭教師としては、公立に関してはいろいろと不満が多いので、それこそここですべてを正直に書いたら炎上しそうな気がしています。

ただ、本当に思うことは、「本人や保護者の確固たる信念があれば公立でもいいんだろうな」「公立校出身で私立校出身の生徒と渡り合える生徒は本当に優秀だな」ということです。

公立のメリット①:人間関係の構築

将来国際的な活躍をするようになる子もいれば、もしかしたら刑務所に入っている子もいるかもしれない。両親に愛情をかけてもらって家もお金持ちで何の不自由もなく育ってきた子もいれば、家に帰っても親が不在にしている子、経済的に苦しくて習い事なんてしたことがない子、様々な子どもがいるのが公立中学です。

高校になると、同級生の進学先も進学校・普通高校・専門系の高校と分かれてきて、その先の大学生活や就職後も、自分とは明らかに境遇の違う同級生と過ごすことは少なくなります。

となると、中学が多様性を体験する最後のチャンスなんですよね。とにかく人間力を育てたい、大人になったときに幅広い交友関係を持っておけるようにするためにも地元の公立に通わせたい、勉強は塾や家庭教師などの外部で補えばいいということであれば、公立で教育を受けさせる価値は十分にあるように思います。

公立のデメリット①:教育システム

むしろ優れているところがあればおしえてくれ(ノTДT)ノ ┫:・’.::・┻┻:・’.::・ドガシャーン!!

公立のデメリット②:教師の質

炎上覚悟でいいますが、公立の教師の質はあまり褒められるところがありません。もちろん一部いますよ。魅力的な教師。教員をやっている友人と話していて、教育関連の話をするたびに「こんな先生におしえてほしかったなー」って思うことも度々あります。

でも、人間性も素晴らしく、社会人としても一流で、専門的な知識も豊富にある公立の教師はほんの一部です。

じゃあ逆に公立にどんな教師がいるのか、以下一部ダイジェストでお届けします。

  • 大学生がアルバイトで塾講師・家庭教師をやっているぐらいの浅い知識しかない
  • 授業が下手で逆に生徒の能力を潰している
  • 進路に関わる定期試験前に特別な理由なしに生徒を部活漬けにする
  • 内申点を感覚的につけることに疑問を感じていない
  • 所属する地域の学校教育以外に興味がなく、視野がせまい
  • 緊急事態宣言で休校になっても「仕方ない」で済ませ、生徒にとって少しでもプラスになるような環境づくりをしない
  • 気に入らない生徒のことをSNSに書き込みフォロワーの同情を誘う
  • 生徒の人生・将来・進路に責任を持たない
  • コミュ障(一般企業なら一次面接で落ちる)
  • 人事評価に否定的(一般企業では当然だけど!?)

いい先生に当たることを期待してはいけません。いい先生に出会えた場合が奇跡です。

公立のデメリット③:内申点のブレ

公立中学校に進むと、次に意識しないといけないのは高校入試ですが、公立高校を受ける場合、いくら実力があっても内申点がよくなければ志望校を受けることさえできません。

ここで問題になってくるのが、内申点は次のようなブレブレな要素で決まるということです。

内申点が決まる要素
  • 教師のさじ加減
  • 学校間のレベルの差

教師のさじ加減

まず、教師のさじ加減で決まるとはどういうことかを説明します。

ひと昔前、正確には2002年頃までは、学校教育は相対評価(他者との比較による客観的な評価)だったので、その学年全体の中で成績が良ければ「5」、悪ければ「1」というように、誰から見てもわかりやすい評価になっていました。

相対評価の付け方
相対評価(引用:豊川市の後成塾

でも、現代では内申点は絶対評価でつけます。絶対評価とはなにかというと、他の生徒とは比較せず教師や学校独自の観点でつけるものであり、なぜその内申点が出されたのかが非常にわかりにくくなっています。

絶対評価の付け方
絶対評価(引用:TSKトリツ進学会

上の表は、AくんとBくんの2人の生徒の評定(内申点)がどう出されたのかを表したものなんですが、Aくんのほうが定期試験の結果が悪いのに、Bくんよりも評定(内申点)は良くなっています。一方で、Bくん目線で見ると、休み明けの試験の結果は良くないのに定期試験で盛り返したということは、定期試験までの期間中に絶対に努力しているはずなんです。でも評定(内申点)はAくんより悪い・・・。提出物を1つも出していないとかならわからなくもないですが、そうでない場合、もう意味不明ですよね。

このようなことが現実として起こりうるのが公立の内申点の出し方なんですが、そもそもこの評価基準も教師によって違うので、同じ実力でもどの教師が教科担当になるかで内申点が変わってくる可能性があるのです。

学校間のレベルの差

また、学校間のレベルの差によっても内申点に差が出てきます。

まったく同じ生徒が2つの高校に通った場合、優秀な生徒が多い学校に通えばその生徒の内申点は低くなる傾向にありますし、まわりがなんの努力もしない生徒ばかりの学校に通った場合、その生徒の内申点は高くなる傾向にあります。

学校間の内申点の差

これは相対評価のようにも思えますが、そういうことではなく、「設定した目標以上の努力をしている」「するべき努力をしていない」という印象を教師に与えた結果の内申点ということです。

これは塾講師や家庭教師側からしても厄介で、内申点5が本当に優秀とは限らないのに、生徒が勘違いして慢心しているケースはたびたびあるみたいなんだよね・・・。

さて、内申点がブレたものであるということを説明してきました。このような内申点のつけ方によって将来が左右されることに納得できますか?

個人的な話になりますが、わたしは公立の生徒を指導する場合、「努力することも結果を出さなければいけないことも当然のことだし、内申点はその結果ついてくるものだ」と指導しています。

まとめ

なるべく公平性を保って記事を書こうと心がけたつもりではありますが、ついつい心の声が漏れてしまった結果になりました。すみません・・・。

私立と公立どちらか悩んでいる場合には、個人的には私立をおすすめしたいです。

ただ、偏りがなく幅広い人間に出会えるという意味では公立も大変素晴らしい環境なので(嫌味ではなく本当にそう思っています)勉強だけがすべてではないという方針のご家庭には、豊富な受験情報を与えてくれ生徒個人の能力を最大限に伸ばしてくれる塾に通ったり家庭教師をつけることを前提に、公立をおすすめします。

関連記事

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

SHARE
URLをコピーする
URLをコピーしました!
目次
閉じる