追記:2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される英語民間試験について、萩生田光一文部科学相は2019年11月1日、20年度の実施を見送ると表明ししました。制度を抜本的に見直し、24年度に実施する入試で「新たな英語試験を導入する」とのことです。
大学入試改革によって、2020年から英語科は民間試験が導入されるといわれています。この記事を書いている2019年10月現在、その民間試験の候補のひとつとなっているのがGTEC。
編集者としてGTECを研究する過程で、GTEC関連の参考書を研究したので、この記事では『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』を紹介します。
GTEC(R) 過去問題集 Advancedとは?
『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』は株式会社アルクが出版している、GTEC初の過去問題集で、元ベネッセ「GTEC」開発統括である大阪大学教授の山下仁司氏の推薦を経て作成されています。
書籍名 | GTEC(R) 過去問題集 Advanced |
出版社 | 株式会社アルク |
金額 | 2,000円+税 |
レベル | CEFR A1-B2 |
GTEC(R) 過去問題集 Advancedの特徴
特徴①:内容が充実
「過去問題集」という名ですが、ただの過去問題集ではありません。
内容はざっくりいうと以下の通り。
- 基本情報(試験内容、試験時間など)
- 攻略法
- 過去問題2回分
- 試験音声
- 解答用紙
- 解答(例)&解説
- 重要語句・重要表現集
- スピーキング対策に特化したアプリの無料ダイジェスト版についての案内
内容が盛りだくさんなところが非常に魅力的です。
特徴②:攻略法
あくまでも個人的な意見ですが、『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』のいちばんの価値は、過去問題の前に掲載されている攻略法にあると思います。
ライティングのこのパートはこう組み立てたら絶対点数取れるよとか、スピーキングのこのパートの解答時間は何分だから、何秒で解答の構成を考えて、何秒で答えよう。焦らなくて大丈夫!とか、受験生の疑問や不安を全部解消してくれる内容になっています。
真剣な話、この攻略法のページだけで、2,000円以上の価値があると思います。
特徴③:試験音声が本番そっくり
これって意外と大事なポイントなんですが、英語の音声が本番とそっくりです。
想像してみてほしいんですけど、もし音声が本番と違ったら、試験対策にならないですよね。音声が本番とそっくりなのは、過去問題集としてかなり価値があります。
※業界裏話的には、本番の声優さんの声を分析して、その声に似た声優さんをつかまえて音声を収録するってけっこう大変なんです。だから、音声がそっくりっていうことは、過去問題集の制作に気合いが入っているってことだって考えられます。
特徴④:解答用紙が本番そっくり
これって意外と大事なポイントなんですが、解答用紙が本番とそっくりです。
想像してみてほしいんですけど、もし解答用紙が本番と違ったら、試験本番のときにちょっと動揺しちゃいますよね。解答用紙が本番とそっくりなのは、過去問題集としてかなり価値があります。
特徴⑤:ライティング&スピーキングの解答例は複数
もしライティングとかスピーキングの解答例がひとつしかなかったら、「え、この意見のときはこういう英語使えるってわかるけど、俺(わたし)の意見はどういう英語で表現すればいいの?」ってなると思うんです。
でも複数解答例があれば、「あ、こういう書き方(話し方)ができるんだー!」っていう学びが多くなります。
『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』は解答例が充実しているので、受験生に優しい過去問題集だなと感じました。
特徴⑥:重要語句・重要表現集
わかりやすくいうと、ミニ単語帳みたいなものが付録でついています。
しかも、ただ単語が羅列してあるだけでなく、ライティングとスピーキング対策のために、「決まり文句としてこれを覚えておけば大丈夫!」的なフレーズが盛り込まれています。
すべてGTECで頻出の英語だから、これを無料で手に入れられるってかなりお得ですよね。
参考:GTECの単語対策を徹底的にしたい場合には、こちらの単語帳がおすすめです。
GTEC(R) 過去問題集 Advancedの評判
2019年10月現在、amazonにはひとつしか評価がありませんでした。
本書は2回分(第24回と30回)の過去問題で2000円です。2回分の問題が別冊として切り離せるようになっており、図や写真は十分な大きさで解像度も良好です。語彙問題や読解問題、リスニングは邦訳と要点のみの解説ですが、必要十分な程度でしょう。資料(パンフレットやチラシ、案内など)の読み取りを行う情報検索問題も同様の邦訳と要点のみの解説です。GTECのクセとも言うべきこの出題は一見実用的観点に見えますが使用される個々のマテリアルへの依存性が高く実態としてはランダムな印象で、本来の英語技能からは外れた要素が目立つようにも思えます。(※1)
ライティングは複数の解答例(多いものは6例)を掲載していて、4ステップでどの様にロジックを組み立てるかを解説していますので、色々な観点に基づいたアプローチの要領が掴めるようになっている点は評価できます。文章は比較的平易な語彙で書かれており、ライティングの高度なスキルを追求する様な解答・解説ではありませんが、文体が似ているのが残念です。同一人物が複数案を作成しているためでしょうか?(※2)スピーキングの音読は文の繋ぎ目や協調語句、発音に注意すべき語を全文に渡って示しています。絵解き問題(英検の二次に類似)は解答と要点のみ解説ですので、このへんの実力をつけたければ英検二次の適当な参考書が使えると思います。意見陳述問題で複数解答例が掲載されている点は評価できると思いますが、文は英検準2級ぐらいかと思います。
総合評価としては手慣れた編集の方法で、ご本家も含めて他のGTEC用参考書よりは大分よく出来ていると思いますが、飽くまでも相対的なもので、英語技能試験の問題解答集としては平均的な出来上がりですね。どれだけ英語の勉強になるか、という観点からは2000円は高いと言わざるを得ませんが、特定試験の対策という商品性と競合相手がまだまだ少ないという点からは仕方がないか、、、というところでしょうか。それにしても、何故第24回と30回なのでしょうね。(※3)英検では、過去3回分とか6回分で出版されています。
大筋は同意できますが、編集者としては何点がつっこみどころがあったので、つっこんでおきますね。
※1:この部分は『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』に対する評価ではなく、GTECの試験そのものに対する評価です。
※2:ライティングの解答例の文体が似ているのは、たぶんそれがGTECの解答例の理想形だからだと思います。解答例である以上、わざわざ点数が取れないような文体で書かないですよね。
※3:なぜ第24回と第30回なんだろうと気になって調べたんですが、どうもほかの出版社が出している過去問題集も第24回と第30回が掲載されているので、契約上の問題なんじゃないかなと思います。
GTEC(R) 過去問題集 Advancedの注意点
基本的には『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』は過去問題集なんですが、一部出版社独自の問題が含まれています。(これも契約上の問題??)
編集者として、可能な限りGTECに似せようとしている努力は感じるので、そこは評価できるんですが、せっかくなら全部GTECオリジナルのものにしてほしかったですよね・・・。
GTEC(R) 過去問題集 Basicについて
GTECのAdvancedは、公式サイトによると、高1~3レベルに設定されています。「中学生だけどGTECに挑戦してみたい」とか「英語が苦手だからとりあえずやさしいレベルで実力を試したい」という場合は、Basicに取り組んでみましょう。
同じ出版社から出ている『GTEC(R) 過去問題集 Basic』は、構成は『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』と同じで、内容だけがBasicの問題になっています。
まとめ
『GTEC(R) 過去問題集 Advanced』は、過去問題集を超越した対策本になっていると思います。確実にいえることは、これが2,000円はめちゃめちゃ安い!!!
受験対策として使えるのはもちろんのこと、GTECの英語はとてもベーシックなものなので、大人の英語勉強用としてもオススメです。
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