教材編集者という仕事柄、プロ目線で徹底的に単語帳と研究しています。
『LEAP』をはじめて手にとったとき、「必要十分な単語帳が登場したなー」という印象をもちました。
辞書からエッセンスを抽出したような単語帳で、そのうえ「単語を覚えるため」にちゃんと手が施されている。そんな『LEAP』をこの記事では紹介します。
LEAPとは?
『LEAP』は駿台・竹岡広信先生による英単語帳です。
書籍名 | 必携英単語 LEAP |
著者 | 竹岡広信 |
発売日 | 2018年11月1日 |
金額 | 950円+税 |
レベル | CEFR A1-B2 |
LEAPの特徴
特徴①:著者
『LEAP』の著者である竹岡先生は、ドラマ「ドラゴン桜」の英語教師のモデルとなった有名講師です。大手予備校のひとつである駿台予備学校の講師とて教壇に立ち、『ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』『竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本』などの数々の本を執筆されるなど、とっっっても幅広く活躍されています。
そんな竹岡先生がつくった英単語帳『LEAP』には、受験に必要な情報がぎゅっと詰まっています。
特徴②:本の構成
Part 1~4で構成されています。Part 1~2はWritingやSpeakingで確実に使いこなせるようにするべき重要英単語、Part 3~4ではReadingやListeningで確実に意味がわかるようにするべき需要英単語が掲載されています。
これって実はかなり大事なポイントだと私は思っています。もちろん理想は全部使いこなせることだけど、これってなかなか難しい。だから、発信(Writing・Speaking)できるレベルまで単語を昇華させておくべきなのか、意味がわかればいいレベルなのかというのを明確に区別してくれているのはありがたいことだなと、教材分析をしていて思いました。
特徴③:語法
語法(単語の使い方のルール)が丁寧に示されていて、辞書のような単語帳だなというのが、『LEAP』の印象です。
例えばagreeの欄では、以下のような内容が書かれています。
agree with ~ / that S V 「(人、人の意見)に賛成する」
agree to ~ / that S V 「(計画、提案に同意する」
ここまで丁寧に、しかもレイアウト的にきれいにまとめている単語帳ってなかなかないので、『LEAP』の魅力だと思います。
もちろん、辞書のように情報を全部載せているわけではなく、重要な情報がピックアップされているので、辞書ではなく『LEAP』を使う価値があるといえます。
特徴④:単語の意味とフレーズ/例文
ほかの単語帳では、単語の意味をなるべく1つに絞っていたり、フレーズ/例文は1つのみというものもあります。『LEAP』は「必要だ」と判断された意味はすべて載っています。(おそらく竹岡先生が判断?)
しかもすばらしいのは、単語と例文はちゃんと対応したものになっていること。
例えば、agreeの欄は以下のようになっています。
単語の意味 | 例文 | |
---|---|---|
①賛成する | ① I totally agree with this opinion. | ①私はこの意見に全面的に賛成です。 |
②(主語の中で)意見が一致する | ②We agreed on this point. | ②私たちはこの点で意見が一致した。 |
③(with ~)(気候、食べ物が)(~に)合う | ③Spicy food does not agree with me. | ③辛い食べ物は私には合わない。 |
左の列と右の列を見比べると、単語の意味と例文の意味が一致しているのがわかりますよね。
ちゃんと学習者が混乱しないようになっているっていうのはとっても大事なことなんですが、これって編集する側の人間から言わせるとなかなか手間がかかることなので、品質のいい単語帳だということができます。
LEAPの評判
LEAPがほかの単語帳と比べて際立っている点は上記にまとめましたが、そのほかの細かい点にも言及しているレビューがネット上あったので、参考までに載せておきます。(こっちのほうが参考になるかも?汗)
駿台の有名講師、竹岡広信氏が贈る最高レベルの英単語帳。他の単語帳のいいとこ取りをしたような傑作になっています。
特徴をまとめると、長所
・見開き左ページは、単語帳の『ターゲット』のように、単語が辞書式に並んでいる
・単語帳の『ドラゴンイングリッシュ英単語』や『鉄壁』のように、各単語に頻出コロケーションと語源による暗記法が記載されている
・右ページは『システム英単語(シス単)』のようなミニマルフレーズと和訳がついている
ミニマルフレーズは英作文に定評のある竹岡氏故か英作文に使いやすい
・赤シート付きで、重要なところは赤シートで隠せる
・『鉄壁』のように、グループごとに単語が分類されており、関連付けて覚えられる
・収録単語は1935語+αでなかなか多い。単語レベルはシステム英単語レベル。CEFRを参考にしているので客観的に重要な単語を押さえている。goやthinkなどの超基本だが英作文で誤用しやすい語句の使い方も記載している。
・音声CDは付いていないが、音声を数研出版のサイトからDL可能でリスニング対策もバッチリ。音声は
1.単語→意味(ターゲット式)
2.ミニマルフレーズ:日本語→英語
3.ミニマルフレーズ:英語→日本語
4.ミニマルフレーズ:英語のみ
の4種類の模様。
・数研アプリでチェックテストができる
・他の単語帳に比べて安価短所
・『鉄壁』や『単語王』級の網羅性はなく、『シス単』よりも収録単語数が少ない
・CEFR-C1〜C2レベルの超ハイレベルな単語はほとんど扱っていない
・単語選定にコーパスなどの客観的データを用いず、CEFRしか参考にしていない
・『DUO』のような熟語はほとんど扱っていない(これは氏が別に『必携英語表現集』を出版しているためだと思われる)
・音声データがかなり重い(計750MB以上ある)
・トラック数がものすごく多いのでウォークマンに入れてオーディオブックに変換するのに2日近くかかる。これに関しては編集アプリなどを用いてトラックをまとめるなりする必要がありそうです。
・他の人も指摘している通り、チェックテストや音声DLがスマホやPCがあること前提のためない家庭は困るし、ある家庭だと生徒がスマホやPCで遊んでしまう恐れがある(まあ、これは今どきの学習参考書全体に言えることだが……)
左側ページはターゲットのような辞書スタイルでドラ単のように語源から覚えられるようになっている。右側ページはシス単のミニマルフレーズのようなものがあり、個人的にはシス単よりも有用性のあるフレーズが多いように思う。また多義語であれば、全ての意味に対してそれぞれフレーズが用意されている。見出し語は鉄壁ように意味の系統ごとに配置されておりよく似た意味の語をまとめて覚えやすい。
オーソドックスな英単語集ではあるが内容の充実度は相当高く今後の新定番となるだろう。
LEAPの注意点
いい意味でも悪い意味でも、「無難な単語帳」というのが欠点ではないでしょうか。
実際にこんなレビューを見かけます。
他の単語帳とあまり違いが見受けられない。確かにターゲット等の情報量が少ない単語帳に比べれば少しは良いのかもしれない。しかし、どう贔屓目に見ても鉄壁の情報量を上回っているとは思えなかった。
goなどの普通の単語帳では扱われない単語も掲載していて、意外とこういう基本単語の用法語法を理解していないので役立つ。しかし、ジーニアス英和辞典などを日頃から引いている人にとってはあまり大したものではない。
「せっかくなら東大生と同じ勉強法で記憶を整理しながら単語を極めたい」(→『鉄壁』がおすすめ)とか、「定番フレーズを重視して勉強したい」(→『システム英単語』がおすすめ)とか、そういう相性も単語帳選びには重要なので、「無難」は気が乗らないという人にはオススメできないかもしれません・・・。
『LEAP』のシリーズ展開
『LEAP』で大学受験レベルの単語を勉強する前に基礎固めをしっかりしたいひとには『LEAP Basic』がおすすめです。
他の英単語帳との比較
有名講師がつくった新しめの英単語帳としてよく比較される『Stock』や、東大受験生も使う『鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』、定番の『英単語ターゲット』や『システム英単語』など、さまざまなタイプの英単語帳の比較一覧は、次の記事でまとめています。
まとめ
『LEAP』は評判がいい単語帳のいいとこどりをしたような単語帳です。
強い個性はないけれど、大きな欠点もない。オーソドックスに英単語を勉強したい人には最強の1冊だと思います。