斬新な単語帳が出たなー、私的好感度No.1単語帳だなーというのが、『Stock』に最初にふれたときの感想です。
あ、いつそう思ったのかというと、編集者としていろいろな出版社から出ている単語帳を分析しないとけなくて、約10冊の単語帳をプロ目線で徹底的に見比べなければいけないことがあったんです。
この記事では、そんな経緯の中で感じた、『Stock』の特徴・メリット・デメリットを紹介します。
Stockとは?
Stockは、スタディサプリ講師関正生先生による単語帳。
以下の2種類があります。
英単語Stock3000
書籍名 | 英単語Stock3000 |
著者 | 関 正生 |
金額 | 1,000円+税 |
レベル | 高校基礎~共通テスト |
英単語Stock4500
書籍名 | 英単語Stock4500 |
著者 | 関 正生 |
金額 | 1,000円+税 |
レベル | 高校標準~難関私大・国公立2次 |
Stockの特徴
特徴①:著者
著者は、スタディサプリで有名な関正生先生。元東進ハイスクール、北九州予備校、秀英予備校英語講師で、TOEIC Listening & Reading Testは990点満点取得。『大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス』や『核心のイメージがわかる!前置詞キャラ図鑑』など有名な教材を山ほど出している、英語教育業界のカリスマ的存在です。
特徴②:本の構成
まずほかの単語帳との圧倒的な違いは、「入試でどう問われるか」という視点で各英単語を対的なカテゴリーに分類している点です。具体的には「文法」「読解」「4技能」というカテゴライズされていて、例えばPart 1のSection 1では
0001-0004 自動詞と他動詞の区別が問われる問題
0005-0009 <SV+語句>(第1文型)でよく使われる動詞(「存在・移動」系が多い)
※数字は見出し語番号
というように、「このページではこういうことを意識して単語を覚えていきましょう」ということがちゃんと示されています。まさに入試直結って感じ。
ほかの単語帳でよくありがちなのは、ただ単に頻出順に英語を並べているもの。でも、よくよく考えたら、実際の入試にこの順番で出てくるわけじゃないし、単語帳に載ってる単語は全部おぼえるのが基本(もしくは第2章までは必ず覚えるとか)だから、頻出順に載せてくれなくてもいいんですよね。
特徴③:ビジュアライズ
単語の中でも特に気を付けたいものにアイコンがついています。
文字で書かれていたら読むのダルいけど、アイコンだから直感的に目に飛び込んでくる。ふだんスマホを見慣れている世代にとって、こういう工夫って大事だなって編集者ながらに思いました。
特徴④:掲載語句
『Stock』に掲載されているのは、これからの入試で出るであろう単語です。
例えば、cyberbulling(ネット上でのいじめ)やcensorship(検閲)はインターネット関連の単語、regenerative(再生力がある)は最新医療関連の単語ですが、こういった単語は、従来の「過去問題データを使って頻度を調べました」系の単語帳には載っていないんです。
これまではあまり出てこなかったけどこれからは出るよっていう単語を載せている『Stock』は、未来型の単語帳だなと思います。
▼参考:「コロナ禍」「医療大麻」「プラごみ汚染」「中絶」「AI(人工知能)」など、最新テーマが厳選された関先生の著書
特徴⑤:記憶ブースター・コミュニケーションブースター
記憶ブースターとは、見出し語を負担なく覚えるためのコメント。単語の解説、使い方の注意、語源、トリビアなどがコメントされています。
コミュニケーション・ブースターとは、「SNSやメールで使える略語」「気分をアゲるほめ言葉」で、言ってしまえば、直接的に単語とは関係のない解説です。
これが両方ともいい効果を発揮している!なんていうか、単語の授業を受けている感覚になれるんですよね。単語ってただただ暗記しててもつまらないじゃないですか?でもブースターがあることでただの丸暗記にならない勉強ができるのが、今までの単語帳にないところかなと思います。
▼参考:ただの丸暗記にならないという点では、『鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』もオススメです。
特徴⑥:例文/フレーズ
1つの単語につき1つの例文またはフレーズが載っています。しかも無駄に長くなくて、覚える価値があるものばかり。
ほかの単語帳だと2つずつ載っているものがありますが、単語帳の目的は単語を覚えることにあるので、そんなにいっぱい載ってる必要ってないんですよね。だったらその時間を文法問題演習とか読解演習にあてたほうがいいし。
特徴⑦:チェックボックス
単語帳って、それぞれの単語にチェックボックスがついていて、覚えた単語(もしくは間違えた単語)にチェックがつけられるようになっているものがほとんどなんですが、『Stock』には1つの単語につきチェックボックスが3つあります。
何回も復習する場合には、これって地味にありがたいですよね。
Stockの評判
評判は上々なようです。
今までの王道単語帳と肩を並べる、もしくはそれを超える単語帳。
理由としては
1記憶ブースター→単語背景や入試パターンなどを利用して受験生に非常に良い覚えやすい工夫がなされています(鉄壁やシス単と類似)。2分野別→文法×単語、読解×単語、4技能×単語だけではありません。もちろんのこの大別化も覚えやすさも素晴らしいですが、その更に中が秀悦です。その中で更に様々な分野立てをして、覚えやすさの工夫を凝らしています(鉄壁と類似)。
3単語理解から長文理解へ→長文向けの単語に関してはテーマ別で区分けされています。私ごとの経験値(塾講師)ではありますが、生徒たちに解かせてきた長文中の頻出単語、キーワードがまさしく掲載されています(リンガメタリカと類似)。
4その他→英検準2・2級向けの単語を掲載、英検面接向けの重要会話フレーズ、前置詞のイメージ解説、ページ番号の横にクイズ形式で出題される会話表現、単語には発音記号とカタカナでそれぞれ発音を表記。
関先生にはスタサプでお世話になっていたので、書店でこちらの単語帳を見つけたときは無意識に手にとってパラパラと見ていました。
第一印象は、楽しい。これでした。見てるだけで楽しいです。本当にどんどんと先に進みたくなります。尚且つ覚えやすい。単語も最新のトレンドの傾向を掴んだチョイスとなっていて、これからの入試で役に立つことは疑いようがないでしょう。
まあとにかく手にとって見てみることを推奨します。買って後悔はしません。
単語の右側に着いている記憶ブースターがめちゃくちゃ覚えやすい覚え方だったり、語源を教えてくれるから他の単語にも生きてきたりといい事づくめ!これは受験の新定番になるべき単語帳であると思う。
Stockの注意点
注意点①:自動詞/他動詞が明記されていない
例えば、containは次のように掲載されています。
contain | 動 含む | This vegetable smoothie contains a lot of vitamins. この野菜スムージーは多くのビタミンを含んでいる。 |
でもcontainって正確には「~を含む」なんですよね。
これをよしとするかしないかは、『Stock』を利用するみなさんの判断によるところだと思います。
ちなみに、個人的な見解になりますが、私はアリだと思っています。なぜかというと、「じゃあ自動詞か他動詞が明示されていたとして、自動詞・他動詞を区別して完璧な暗記ができていますか?」っていうことなんですけど、これって受験的には完璧にしなくてOKなんです。文法問題として問われる語はある程度決まってくるから、それはまた別に文法演習とかをする中でクリアにしていけばOKだと、わたし(=進学塾講師&家庭教師経験者)は思っています。
注意点②:頻度別ではない
ネット上のレビューを見ているとこんな声が上がっています。
1冊目の単語帳としては不向きと言えると思います。ターゲットやシス単のように頻出度別ではないからです。このページまでを覚えれば、この偏差値のレベルの語彙力が身につけられるという目安がないので、そこはDUO3.0と同じイメージを受けました。
んー、たしかに。やっぱり効率を考えると、なるべく頻度が高いものを前半に置いておいてくれたほうがありがたいっていうのは、学習者の本音ですよね。だって、何千語もある最後のほうの単語なんて覚えてる自信ないし・・・。
ただこれは、「Stockの特徴①:本の構成」のところで書きましたが、単語帳の順番で実際の入試に出てくるわけじゃないし、単語帳に載ってる単語って全部覚えるのが基本(もしくは第2章までは必ず覚えるとか)だから、頻出順に載せてくれなくて問題ないと私は思っています。あくまでも個人的な見解です。
他の英単語帳との比較
有名著者が執筆している比較的新しめの英単語帳『LEAP』や、東大生も使う『鉄緑会英単語熟語 鉄壁』、定番の『英単語ターゲット』や『システム英単語』など、さまざまなタイプの英単語帳の比較一覧は、次の記事でまとめています。
まとめ
編集者目線でいうと、新刊を出すときって、トレンドを押さつつ、競合他社の教材を研究しまくって、これから絶対売れるであろうものを制作するんです。
そして、著者は、やっぱりこだわりやプライドがあるから、質の悪いものは出したくない。そしてなにより、受験生が「本当に使える!」と思うものを作りたい。
『Stock』は著者(関先生)のこだわりがぞんぶんに詰め込まれた優秀な単語帳だと感じました。
同じ出版社が出すものが必ずしも全部すばらしいわけではないので、そこには注意しましょう。『Stock』がすばらしいのは、関先生の能力によるものです。